皮膚科開業を成功させるコツは?必要な費用や注意点も併せて解説

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「将来的に皮膚科クリニックを開業したい」と考えているものの、独立開業を成功させるために何をどうすべきか具体的に知りたい人は多いのではないでしょうか。

今回は皮膚科開業を成功させるコツ、必要な費用や注意点について解説します。この記事を読めば、皮膚科開業へ向けてやるべきことが明確になり、スムーズに準備を進められるようになるので、ぜひご一読ください。

この記事は以下のような人におすすめ

  • 皮膚科クリニックの開業を検討している人
  • 皮膚科クリニック開業成功のために必要な取り組みが知りたい人
  • 皮膚科クリニックを開業する際の注意点が知りたい人

皮膚科開業を成功させるコツ

皮膚科クリニックの開業を成功させるためには、以下の6つのコツを実践しましょう。

皮膚科開業を成功させるコツ

  1. 集患しやすい開業地・物件を選ぶ
  2. 内装は診療内容に合わせて設計する
  3. 他院との差別化を図る
  4. オペレーションの効率化を図る
  5. スタッフは余裕を持って採用する
  6. 開業前から集患施策を講じる

1.集患しやすい開業地・物件を選ぶ

集患に有利な条件が揃った開業地を選ぶことで、安定した収益を確保しやすくなります。

集患しやすい開業地の立地条件

  • 周囲から見て発見しやすい(視認性が高い)
  • 人通りが多い(特に日中)
  • 地域住民に認知されやすい場所にある(ランドマーク周辺など)
  • 駅から近い
  • 住宅地から近い
  • 駐車場・コインパーキングがある
  • 競合医院が少ない

医師のスキルや実績が優れていたり、診療内容が魅力的だったりしても、立地条件が悪いと集患しにくくなります。特に単価が低い保険診療をメインとする場合、多くの患者さんを呼び込まなければならないので、わかりやすく通いやすい場所にあるかどうかが重要です。

一方、美容皮膚科などで自費診療に注力する場合、患者さんと長期的な関係を築く必要があるので、交通アクセスの良い開業地が有利になります。

患者さんの取り合いにならないよう、あらかじめ競合医院の存在をチェックしておくことも大切です。皮膚科クリニックはあらゆる地域に存在するため、できるだけ競合医院が少ない開業地を選びましょう。

集患しやすい開業地の立地条件を満たす物件は、一般的に「医療モール」や「ビル診(ビル診療所)」で見つかりやすい傾向があります。

医療モールとは、複数の医療機関と調剤薬局を1箇所に集めた施設のことです。地域のランドマーク的な側面が強く認知度を高めやすいほか、集患において他のクリニックとの相乗効果が期待できます。

ビル診(ビル診療所)は、ビル内部にあるテナントのことです。駅前や都心部といった好立地の物件が多いので、皮膚科との相性が良く集患しやすいでしょう。

2.内装は診療内容に合わせて設計する

皮膚科クリニックは診療内容によってターゲット層が異なるので、ターゲット目線で内装を設計する必要があります。

保険診療がメインの場合、不安を抱えている患者さんが数多く来院するため、リラックスできる空間づくりを意識しましょう。例えば、間接照明の柔らかな光で照らしたり、安心感を与えるブラウン系やグリーン系の壁紙を使ったりすると効果的です。

症状・疾患によっては接触感染が起こりうるので、感染症対策を講じることも重要です。待合室の椅子は間隔をあけて配置する、非接触・センサー式の自動ドアを設置するといった対策を講じましょう。

美容皮膚科の診療がメインの場合、患者さんは見た目のコンプレックスや問題を相談したいと考えているので、遮音性の高い診察室やカウンセリングルームが欠かせません。患者さん同士が顔を合わせないよう、院内の動線設計も工夫する必要があります。

美容皮膚科の患者さんは女性がほとんどなので、内装設計に女性目線を取り入れることが大切です。メイク直し用のパウダールームを設置したり、ラグジュアリーなインテリアを採用したりすれば、より良い印象を与えられるでしょう。

3.他院との差別化を図る

皮膚科クリニックは数が多いため、自院ならではの特徴や強みを前面に押し出して、他院との差別化を図ることが大切です。

厚生労働省が公表している「医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」によれば、皮膚科を標榜するクリニックは2020年時点で12,410施設です。全診療科中6番目に多い数値なので、皮膚科クリニックは全国どこに存在していても珍しくないといえるでしょう。

出典:令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況|厚生労働省

他院との差別化を図る場合、主に診療内容の独自性をアピールすると効果的です。例えば、小児皮膚科や女性皮膚科などターゲットを絞って標榜することで、自院と他院の違いをスムーズに訴求できます。

アトピー治療・ニキビ治療・アンチエイジング・肌質改善など、特定分野の診療に特化するのも一案です。「〇〇の症状ならお任せ」といったキャッチコピーを提示しつつ、治療実績や医療機器をアピールすれば、遠方から患者さんを呼び込める可能性があります。

4.オペレーションの効率化を図る

皮膚科クリニックで保険診療をメインとする場合、患者さん1人あたりの単価が低くなります。経営を軌道に乗せるためには、より多くの患者さんに対応できるよう、効率的な診療の仕組みをつくることが大切です。

例えば、診療予約システムやWeb問診システムを導入すれば、患者さんは来院前に受付・問診ができるようになります。結果的に待ち時間・診療時間を短縮できるため、空いた時間の分だけ診療件数を増やすことが可能です。

5.スタッフは余裕を持って採用する

皮膚科クリニックを運営するためには、看護師や医療事務といったスタッフが必要不可欠です。現状、医療業界は人手不足が進行しているので、スケジュールに余裕を持って採用しなければなりません。

スタッフの能力や性格はクリニックの印象に直結するため、採用前の段階でしっかり見極めることが大切です。特に皮膚科は患者さんとの距離が近く、問診や診療にスタッフが直接携わるので、接遇や医療処置のスキルが求められます。

スタッフは開業1ヶ月前を目途に採用したうえで、事前に研修を行いましょう。研修期間で業務の流れや担当、機器の使い方などを習得する必要があります。

思うようにスタッフが集まらない場合、正社員だけではなく、派遣社員やパート・アルバイトでの採用を検討すべきです。家庭の事情で日中のフルタイム勤務が難しい人でも、時短勤務やシフト勤務なら対応できる可能性があります。

6.開業前から集患施策を講じる

良好なスタートダッシュを切るためには、皮膚科クリニック開業前の段階から集患につながるマーケティング施策を講じることが大切です。今はインターネットで情報収集を行う患者さんが多いので、Webマーケティングを主軸に据えることで、効率的に集患しやすくなります。

特にホームページの有無はクリニックの信用に関わるため、必ず用意しましょう。個人でもWordPressなどを使って制作できますが、クオリティや手間を踏まえると専門業者に依頼したほうが得策です。

ホームページを起点にしつつ、自院のSNSアカウントから情報を発信したり、ディスプレイ広告や動画広告といったWeb広告でアピールしたりするのも有効です。複数の集患チャネル(経路・媒体)を組み合わせることで、相乗効果が見込めるようになります。

一方、高齢層の患者さんが多い地域で開業する場合、折込チラシや看板といったアナログ広告が有効です。アナログ広告による集患施策なら、普段インターネットを利用しない人にもアプローチできます。

皮膚科クリニックの開業に必要な費用

保険診療メインの一般的な皮膚科クリニックを開業する場合、少なくとも4,000万~5,000万円程度の費用が必要です。

物件の取得費用は、開業形態や地域によって変動しますが、テナント開業なら敷金・礼金・仲介手数料が合わせて300万円程度、内装工事費が1,500万円程度はかかってきます。

医療機器の購入費用は、顕微鏡・レーザー治療機器・電子カルテ・滅菌機など、基本的なものを導入するだけでも2,000万円程度はかかるでしょう。オフィス家具や業務用パソコンなど、その他の設備の購入費用は200万円程度です。

ホームページ制作や開業前後のマーケティング、スタッフの採用などにも費用がかかります。事前に融資など含めた資金計画をきちんと立てたうえで、開業準備を進めることが大切です。

美容皮膚科の診療を行う場合、美容系の医療機器や設置するための部屋が別途必要なので、プラスで1,000万円程度の費用がかかってきます。

皮膚科クリニックを開業する際の注意点

皮膚科クリニックの開業を考えているなら、以下の4点に注意してください。

皮膚科クリニックを開業する際の注意点

  1. 運転資金の不足
  2. 過剰な設備投資
  3. スタッフの早期離職
  4. 医療広告ガイドライン違反

1.運転資金の不足

クリニック開業から3ヶ月程度は思うように集患できず、来院患者数が想定より少なくなりがちです。さらに、保険診療だと診療報酬が入金されるまで2ヶ月はかかるので、収益を確保しにくい傾向があります。

開業当初の資金不足を補う運転資金が不足した場合、スタッフの給与支払いが滞ったり、医薬品や備品の調達が難しくなったりするため、信用低下や機能不全に陥りかねません。

クリニック開業前に最低でも月間支出の3ヶ月分、可能なら6ヶ月分の運転資金を確保しておきましょう。十分な資金があれば、予期せぬ支出にも対応しやすくなります。

2.過剰な設備投資

皮膚科クリニックでは、診療内容によって高額なレーザー機器などを用いるケースがあります。しかし、開業当初から設備投資がかさんでしまうと、資金繰りが厳しくなってしまい、運転資金や広告費が不足しがちです。

クリニックの経営が軌道に乗るタイミングで、高額な医療機器の導入を検討しましょう。開業後ある程度期間が経過すれば、患者のニーズや差別化のポイントが見えてくるので、医療機器の必要性を判断できるようになります。

医療機器の購入資金を確保できない場合、リースやレンタルで導入するのも一案です。契約や仕様の制限はありますが、購入より費用負担を大幅に抑えられます。

3.スタッフの早期離職

クリニックを開業するにあたり、オープニングスタッフは必要不可欠です。特に開業当初は業務が安定しにくいため、オープニングスタッフが早期離職すると、経営が回らなくなってしまう可能性があります。

早期離職の主な原因としては、マネジメント不足や教育不足が挙げられます。スタッフが安心して働けるよう、定期的に院長との面談を設定したり、スキルアップの研修や勉強会を実施したりすることが大切です。

また、職場の人間関係の悪さも早期離職につながります。日頃から積極的にコミュニケーションをとったり、スタッフへの聞き取り調査を行ったりするなど、原因に応じた対策を講じましょう。

採用のミスマッチが起こらないよう、採用活動の段階でスタッフの適性を見極めることも重要です。スキルや資格が優れていても、仕事に対する姿勢や本人の性格に問題があると、早期離職のリスクは高まってしまいます。

4.医療広告ガイドライン違反

2018年6月1日以降、クリニックのホームページが医療広告ガイドラインの適用対象となりました。皮膚科・美容皮膚科も例外ではなく、写真の被写体やテキストの表現に注意しなければなりません。

例えば、患者さんを誤認させるビフォーアフター写真(症例写真)を掲載したり、他院と比較するような文言を載せたりすると、医療広告ガイドラインに違反してしまいます。

違反発覚後の行政指導や是正命令に従わなかった場合、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金というペナルティを科せられる可能性があります。自院の信用にも関わるため、ガイドラインの内容は必ずチェックしておきましょう。

出典:医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針 (医療広告ガイドライン)|厚生労働省

皮膚科開業のQ&A

皮膚科開業でよくある質問をQ&A形式でまとめたので、ぜひご確認ください。

1.皮膚科クリニック開業までの流れは?

皮膚科クリニックを開業する場合、以下の流れに沿って準備を進めます。

基本的な開業の流れ

  1. 開業時期・コンセプトの決定
    実際にクリニックを開業する時期、自院の診療コンセプトや経営理念を決定します。
  2. 事業計画の作成
    理想的な開業を実現できるよう、資金計画やキャッシュフローなどの詳細を事業計画書に反映します。
  3. 診療圏調査
    診療圏調査を実施もしくは外注し、開業候補地における1日あたりの来院患者数見込み、人口動態や競合状況をチェックします。
  4. 物件の選定
    診療圏調査の結果や自院のターゲットを念頭に、集患しやすい地域・物件を選びます。
  5. 資金調達
    事業計画に基づいて借入希望金額を算出し、金融機関から融資を受けるための交渉・手続きを行います。
  6. 内装工事
    施工業者にクリニックの内装・レイアウト設計や工事を依頼します。
  7. 機器・設備の選定
    診療に用いる医療機器、院内に設置する家具・家電などを選びます。
  8. スタッフの採用
    看護師や医療事務といったスタッフを迎え入れるため、求人募集や採用選考を進めます。
  9. 集患施策
    ホームページの作成や業務用SNSアカウントの作成、広告の出稿などを実行します。
  10. スタッフの研修
    スタッフ採用後、業務習得や認識共有に向けた研修を実施します。
  11. 行政手続き
    「診療所開設届」や「保険医療機関指定申請」の手続きを進めます。

2.皮膚科開業医の平均年収はいくら?

厚生労働省の「第24回医療経済実態調査報告」によると、個人診療所の皮膚科の医業収益は6,558万3,000円、損益差額は2,429万5,000円です。損益差額は医業収益から経費を差し引いた指標で、開業医の平均年収に該当します。

診療科別の平均年収(損益差額)を見ると、1位は小児科で3,958万1,000円、最下位は精神科で2,004万1,000円です。

出典:第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告|厚生労働省

一方、労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によれば、皮膚科勤務医の平均年収は1,078万円となっています。

出典:勤務医の就労実態と意識に関する調査|独立行政法人 労働政策研究・研修機構

皮膚科開業医の平均年収は他科より低めですが、皮膚科勤務医と比べて1,300万円以上の差があります。開業はリスクを伴うものの、年収アップを狙うなら最も有望な選択肢といえるでしょう。

3.皮膚科開業後の収支はどうなる?

厚生労働省の「第24回医療経済実態調査」をもとに、皮膚科クリニックの収支データ(2021~2022年度分)を表形式でまとめました。

項 目金 額構成比率金額の
伸び率
2021年(度)2022年(度)2021年(度)2022年(度)
千円千円
Ⅰ 医業収益67,79565,583100.5100.1-3.3
Ⅰ’ (参考)「新型コロナウイルス感染症関連の補助金
(従業員向け慰労金を除く)」を除いた
医業収益(Ⅰ-3’)
67,45965,498100100-2.9
1.入院診療収益0000
保険診療収益0000
2.外来診療収益66,65164,87798.899.1-2.7
保険診療収益62,01960,03291.991.7-3.2
3’.(再掲)新型コロナウイルス感染症関連の補助金
(従業員向け慰労金を除く)
336850.50.1-74.7
Ⅱ 介護収益0000
Ⅲ 医業・介護費用42,09241,28862.463-1.9
1.給与費16,98317,10625.226.10.7
2.医薬品費7,4207,2771111.1-1.9
3.材料費1,6401,2032.41.8-26.6
4.給食用材料費0000
5.委託費70483811.319
(再掲)給食委託費0000
(再掲)人材委託費601140.10.290
(再掲)紹介手数料53400.1580
6.減価償却費2,9322,7424.34.2-6.5
7.その他の医業・介護費用12,41212,12218.418.5-2.3
(再掲)設備機器賃借料6075690.90.9-6.3
(再掲)医療機器賃借料2161780.30.3-17.6
(再掲)水道光熱費4955630.70.913.7
Ⅳ 損益差額(Ⅰ+Ⅱ-Ⅲ)25,70324,29538.137.1
(参考)「新型コロナウイルス感染症関連の補助金
(従業員向け慰労金を除く)」を除いた
損益差額(Ⅳ-3’)
25,36724,21037.637
Ⅴ 税金
Ⅵ 税引後の総損益差額(Ⅳ-Ⅴ)
施設数52

出典:第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告|厚生労働省

皮膚科クリニックを開業するなら準備は早めに!

皮膚科クリニックは数が多いので、他院に対するアドバンテージが少ないと、集患で苦労します。効率的に患者さんを集めるためには、立地条件が良い開業地を選んだうえで、早めに集患施策を講じることが大切です。

医療業界は人手不足が続いているので、スタッフの採用活動もできるだけ早めに取り組む必要があります。後回しにしていると、優秀な人材を他院に取られてしまう可能性が高いためです。

遅くとも開業の1年前には開業準備をスタートできるよう、余裕のあるスケジュールを立案しましょう。

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