注文住宅の購入を検討しているものの、契約や入居に至るまでのプロセスに関して疑問点が多く、不安を感じている人も多いのではないでしょうか。
今回は注文住宅を購入する際の基本的な流れ、支払いのタイミングや必要書類について解説します。この記事を読めば、よりスムーズに注文住宅を建築できるようになるので、ぜひご一読ください。
この記事は以下のような人におすすめ
- マイホームを建てたい人
- 注文住宅の建て方について知りたい人
- 注文住宅における住宅ローンや費用の流れが知りたい人
注文住宅購入の流れ9ステップ

注文住宅を購入する場合、以下の9ステップを踏む必要があります。
注文住宅購入の流れ
- 予算の設定・情報収集
- イメージの具体化・希望条件の明確化
- ハウスメーカー・工務店の選定
- 土地の選定(土地なしの場合)
- プラン作成と見積もりの依頼・住宅ローンの事前審査
- 契約の締結
- 詳細打ち合わせ・住宅ローンの本審査
- 着工
- 竣工・引き渡し
それぞれ詳細をまとめました。
1.予算の設定・情報収集
最初のステップは、注文住宅の購入に充てる予算を決めることです。注文住宅はローンを組んで購入するケースが一般的なので、世帯年収や自己資金だけではなく、住宅ローンの借入額や返済額も考慮して算出する必要があります。
国土交通省の「令和5年度住宅市場動向調査報告書」によれば、注文住宅を取得した世帯の74.8%が住宅ローンを利用しています。
住宅ローンの借入額や返済額は、正式なローン契約を結ぶ際に確定しますが、事前に金融機関のホームページなどでシミュレーションできるため、大まかな目安を把握することが可能です。
予算の設定を誤ると、後々の資金不足や返済難を引き起こしかねないので、慎重に対応しましょう。
予算の設定と並行して、家づくりに向けた情報収集も進める必要があります。注文住宅関連のWebサイトやカタログを閲覧したり、モデルルームの見学会に足を運んだりするなど、さまざまなルートから情報を集めましょう。
2.イメージの具体化・希望条件の明確化
予算と収集した情報をベースに理想とするマイホームのイメージをつくりましょう。「どのような家に住みたいか」を家族間で話し合いつつ、具体的なイメージを一緒に考えることで、おのずと注文住宅に関する希望条件が決まります。
「外観はモダンテイストがいい」「広い中庭が欲しい」など、希望条件をある程度明確にしておけば、家づくりがスムーズに進みやすくなります。ただし、すべての希望条件を反映できるとは限らないため、あらかじめ優先順位を設定しておきましょう。
もしイメージや希望条件が思い浮かばないときは、今の住まいに対する不満を考えてみましょう。仮に「物が散らかりやすい」という不満を抱えている場合、収納スペースの増加によって解消できるので、ウォークインクローゼットや床下収納といった答えに行きつきます。
3.ハウスメーカー・工務店の選定
注文住宅を取り扱っている住宅会社は、大きく分けてハウスメーカーと工務店の2種類です。どちらも法律上の定義はないものの、事業規模や対応エリアの違いによって使い分けられています。
一般的にハウスメーカーは全国展開している大手企業、工務店は特定地域に密着している中小企業を指します。両者のメリット・デメリットは、以下の通りです。
項目 | ハウスメーカー | 工務店 |
---|---|---|
メリット |
・大手ゆえに安心感がある |
・設計の自由度が高い |
デメリット |
・標準仕様から外れる設計は難しい |
・施工品質にばらつきがある |
それぞれ得手・不得手があるため、自分のニーズに合った住宅会社を選ぶことが大切です。
4.土地の選定(土地なしの場合)
土地を所有していない場合、注文住宅用の土地探しも進める必要があります。ハウスメーカー・工務店の選定と並行すれば、土地取得費と建物工事費のバランスを取りやすくなるため、適切な予算配分が可能です。
土地探しはインターネットや自分の足で売地を見つけるか、あるいは不動産会社に別途依頼する方法が基本となります。近年は注文住宅を建てる場合、ハウスメーカー・工務店に土地探しを併せて依頼できるケースも増えているため、窓口を一本化したい人におすすめです。
5.プラン作成と見積もりの依頼・住宅ローンの事前審査
ハウスメーカー・工務店の候補を絞り込んだら、各社に注文住宅の希望条件をしっかり伝えたうえで、間取りのプラン作成と費用の見積もりを依頼しましょう。その後、各社から提示されたプラン内容と見積もり内容を比較し、依頼先を決定します。
家づくりのパートナーを決める重要なステップなので、保証やアフターフォローの充実度、担当者の対応品質、レスポンスの速さなども加味し、最終的な判断を下しましょう。
見積もりの依頼と同じタイミングで、住宅ローンの事前審査(仮審査)を申し込みましょう。事前審査は土地の売買契約・工事請負契約を結ぶ前ならいつでも可能ですが、間取りプランと見積もりが出た時点での申請がスムーズです。
事前審査を通過しないと本審査には進めないので、世帯年収や自己資金を踏まえつつ、適切な借入額を設定しましょう。
なお、国土交通省が公表している「令和5年度住宅市場動向調査報告書」によると、令和元年以降における住宅ローンの平均借入額はおおよそ3,300~4,100万円です。
年度 | 平均借入額 |
---|---|
令和元年度 | 3,361万円 |
令和2年度 | 3,409万円 |
令和3年度 | 3,909万円 |
令和4年度 | 3,772万円 |
令和5年度 | 4,126万円 |
6.契約の締結
依頼したいハウスメーカー・工務店が決まったら、正式に工事請負契約(本契約)を締結します。契約締結後にプラン変更を申し入れた場合、追加費用を請求される可能性が高いので、仕様や設備が希望条件に沿っているか、きちんと確認しておきましょう。
工事請負契約締結とともに手付金を支払うケースが多いため、キャンセル時に手付金が返ってくるかどうかも要チェックです。
7.詳細打ち合わせ・住宅ローンの本審査
工事請負契約を締結したら、ハウスメーカー・工務店の担当者と打ち合わせを実施します。間取り・設備・デザイン・外構などの詳細に加えて、地盤調査や地鎮祭の日程も決定しなければなりません。
仕様や設備が正式に決まったら、建築予定の住宅が違法ではないことを証明する建築確認の申請が必要です。
建築確認が完了したら、自治体もしくは指定確認検査機関から証明書として建築確認済証が交付されます。本人確認書類など金融機関に提出し、住宅ローンの本審査へと進みましょう。
本審査を通過したら、金融機関と住宅ローン契約を締結します。
8.着工
建築確認申請と住宅ローン契約が済んだら、いよいよ注文住宅の着工です。ハウスメーカー・工務店によっては着工前に棟梁と顔合わせができるので、必要なら担当者に問い合わせましょう。
工事中は騒音や粉塵が発生するため、近隣住民への挨拶回りも欠かせませんが、現場監督などに任せることもできます。
着工後も定期的に現場まで足を運び、工事の進捗を確認することが大切です。
9.竣工・引き渡し
工事が完了したら、市区町村もしくは民間評価期間による完了検査を受けます。特に問題なければ、交付される検査済証を受理しましょう。
引き渡し前には施主立ち合いのもと、設備や建具の不具合をチェックします。気になる点があれば、必ず修正を依頼しましょう。
検査・修正が終わったら、引き渡しの手続きに入ります。
注文住宅における支払いのタイミング

注文住宅を購入する場合、費用は3~4回に分割して支払います。細かい条件はハウスメーカー・工務店によって異なりますが、以下のような流れで支払うケースが一般的です。
スケジュール | 費用 | 割合 |
---|---|---|
工事請負契約締結時 | 手付金 | 工事費用の10% |
着工時 | 着工金 | 工事費用の30% |
工事中 | 中間金 | 工事費用の30% |
竣工時 | 残代金 | 工事費用の30% |
工事請負契約締結前に仮契約を結ぶ場合、数万~数十万円程度の申込金を要求されるケースもあります。
注文住宅にかかる費用

注文住宅を建てる際にかかる費用は、大きく分けて土地取得費と工事費用の2種類があります。すでに土地を所有している人は、後者のみの支払いが必要です。
工事費用に関しては、以下の3種類に分類されます。
種類 | 概要 |
---|---|
本体工事費用 | 基礎、躯体、内装、設備などの工事にかかる費用 |
付帯工事費用 | 屋外給排水工事や外構工事にかかる費用 |
諸費用 | 登記費用や住宅ローン手数料など工事以外でかかる費用 |
工事費用のほかに住宅ローンの返済分や固定資産税など、注文住宅完成後にかかる費用もあるため、余裕を持った支払い計画を立てましょう。
1.注文住宅にかかる費用の全国平均
国土交通省の「令和5年度住宅市場動向調査報告書」によれば、住宅建築資金と土地購入資金を合わせた合計金額の全国平均は5,811万円です。
個別に全国平均を見てみると、住宅建築資金は4,319万円、土地購入資金は1,929万円となっています。
2.工事費用の目安
工事費用は注文住宅に取り入れる仕様や設備、依頼先の住宅会社によって大きく変動します。
本体工事費用は、一般的に工費費用全体の7割以上を占めています。ハウスメーカー・工務店の担当者が建築費を提示した場合、本体工事費用の金額のみ知らせているケースが大半です。
付帯工事費は、工事費用全体の2割程度が目安です。ただし、地盤改良工事や古い建物の解体工事を行う場合、追加費用がかかってきます。
諸費用は、設計料を除くと工事費用全体の1割程度です。
注文住宅購入時に役立つ融資2選

住宅ローンの融資は原則として竣工後に始まるので、自己資金が少ない場合、着工金や中間金を支払えない可能性があります。資金繰りが難しい場合、つなぎ融資と分割融資を検討しましょう。
1.つなぎ融資
つなぎ融資とは、住宅ローンと別々に借り入れる一時的なローンです。原則として担保不要であり、住宅ローンの融資が始まるまで利息のみ支払い、融資実行後に借入金を一括返済します。
竣工・引渡し前に支払う費用を用立てることが目的なので、着工金や中間金はもちろん、土地取得費にも充てられます。
一方、つなぎ融資は住宅ローンに比べて金利が高めです。個別に契約する性質上、事務手数料や印紙代が別途かかるというデメリットもあります。
なお、すべての金融機関がつなぎ融資に対応しているわけではないので、事前に確認しておきましょう。
2.分割融資
分割融資とは、住宅ローンを複数回に分けて借り入れる方法です。土地購入時や着工金の支払い時など、費用を支払うタイミングで融資が実行されます。
分割融資は住宅ローンと同じ金利で利用できるケースが多いため、つなぎ融資に比べて低金利です。また、住宅ローンの一部として扱われるので、住宅ローン控除を適用できる可能性もあります。
一方、分割融資は土地・建物を購入する際、それぞれに抵当権を設定しなければならず、司法書士への報酬や登録免許税といった費用が都度発生します。また、融資実行のたびに手数料がかかるため、つなぎ融資より諸費用は高くなりがちです。
分割融資が非対応の金融機関があるため、注意してください。
注文住宅購入時の必要書類

注文住宅を購入する際の必要書類を、手続きのタイミング別にまとめました。下記はあくまで一例なので、詳細は担当者に確認しましょう。
タイミング | 必要書類 |
---|---|
仮契約の締結 | ・仮契約 ・印紙税 ・申込金 |
住宅ローンの事前審査 | ・事前審査申込書 ・本人確認書類(運転免許証、パスポートなど) ・収入証明書類(源泉徴収票、確定申告書など) ・物件に関する書類(実測図、建物の図面など) ・注文住宅の見積書 ・残高証明書(他にローンを組んでいる場合) |
工事請負契約の締結 | ・工事請負契約書 ・工事請負契約約款 ・設計図書 ・仕様書 ・工事費見積書 ・印紙税 |
住宅ローンの本審査 | ・本人確認書類(運転免許証、パスポートなど) ・収入証明書類(源泉徴収票、確定申告書など) ・物件に関する書類(実測図、建物の図面など) ・注文住宅の見積書 ・残高証明書(他にローンを組んでいる場合) ・工事請負契約書 ・重要事項説明書 ・建築確認済証 ・住民票 ・印鑑証明書 ・団体信用生命保険申込書兼告知書 |
注文住宅を購入する際の注意点

注文住宅の購入で失敗しないためには、以下の3点に注意しましょう。
- 余裕のあるスケジュールを組む
- ライフステージの変化を考慮する
- 工期延長・追加費用に注意する
1.余裕のあるスケジュールを組む
注文住宅を建てる場合、完成まで早くても6~8ヵ月程度、長いと15ヵ月程度の期間がかかります。
参照:トヨタホーム
仕様や設備によって期間は前後し、必ずしも予定通りに進行するとは限らないため、できるだけスケジュールに余裕を持たせることが大切です。入居希望日から逆算すれば、余裕のあるスケジュールを組みやすくなります。
2.ライフステージの変化を考慮する
注文住宅は長く住み続ける生活拠点なので、将来的なライフステージの変化を見据えて建築する必要があります。家族構成や世代とともに、住宅へのニーズは変わるためです。
例えば、子ども部屋の出入口をあらかじめ2つ設けておけば、お子さんの成長に合わせて間仕切りで部屋を分割できるため、将来の快適性や利便性が高まるでしょう。
将来的に両親との同居を考えている場合、あらかじめ1階部分に個室を追加しておけば、移動や介護にかかる負担を軽減できます。
3.工期延長・追加費用に注意する
注文住宅では、悪天候や資材不足によって工期が延びるケースは少なくありません。そのため、工期延長時の保障について確認したり、仮住まいを事前に探したりすることが大切です。
地盤調査の結果や仕様変更に応じて、追加の工事費用を請求される可能性もあるので、資金繰りや融資への影響を確認しておきましょう。
注文住宅購入の流れを押さえて楽しい家づくりを!
注文住宅を建てる場合、さまざまな準備や手続きを踏まなければならないので、時間と労力がかかります。しかし、他の住宅に比べて設計の自由度が高いことは、何物にも代えがたい魅力です。
理想のマイホームを追求するプロセスは、注文住宅ならではの醍醐味ともいえるので、その手間暇を楽しんでみてはいかがでしょうか。